産経ニュースが今年の2月28日に伝えたところによると[URL]、元々は鳩山前首相が言い出したことのようで、今年の6月に決定した新成長戦略の指標とするために今年の3月前半には実施したいと言っていたようです。それが来年2011年までに具体的な測定方法の案を示すとなっているので相変わらずの政策実行の遅さに対するつっこみはさておき。
気になるのは仙谷由人国家戦略担当相(当事)が言っている次の言葉です。
「実感として国民が何をどのように感じ、思っているのかを今の時点でどのように調査できるか(考えている)」
多くの人は心理学というと「精神病の人を治す」といったことを思い浮かべるかと思いますが、こと社会心理学に関しては一般の人が物事をどのように考え、感じるかについて研究する学問です。そういう意味では仙谷氏が言っていることはいかにも社会心理学者が得意としそうな仕事であります。
ではどういう人がこの件にかかわっているかというと、時事通信社が言うには「経済学や社会学などの有識者らで構成する研究会(座長・山内直人阪大大学院教授)」が検討しているそうです。「経済学や社会学など」に具体的にはどのようなメンバーが含まれるのかは分かりませんが、座長として上がっている山内教授は、経済のバックグラウンドから国際公共政策の分野で博士号をとられた方のようです[URL]。
社会心理学者で幸せについて研究をしている人と言えばすぐに思いつくのは大石繁宏教授とダニエル・ギルバート教授です。2人ともアメリカで研究をされていますが、大石教授は人が幸せと感じる際の原因と、幸せを感じることがもたらす結果について研究をされています。特に人に理解されたり誤解されたり、人との関係性に重点をおいて研究をされているようです。ギルバート教授は人が幸せをどのように想像するのか(しばしば過大に見積もるためにがっかりしたり、過小に見積もるために幸せのチャンスを逃したりしている)を研究されている方です。
もし本当に心理学者が上記の研究会に関わっていないのならその原因はいくつか考えられます。まず、今回の研究会を設置した内閣府が社会心理学者が何をやっているのか知らないという可能性。つぎに、何をやっているかは知っているが社会心理学者には国政に関わることなんて任せられないと思っている可能性(人の考え方、感じ方に関する尺度を作成しようとしているのだからこの可能性が事実だとすればひどい誤解です)。そして内閣府は声はかけたが心理学者が断った可能性。
いずれにせよ、今回の問題はいかに日本の心理学者が社会に関わっており、関わっていくべきかの問題提起をしていると思います。
世の中はお金で動いているのではなく、集団が動かしているのでもなく、そこにいる人間が動かしているという事に人々は気づき始めています。控えめに言っても、その可能性にも目を向けるべきだという流れが生まれ始めているように感じます。こんなときこそ心理学のチャンスだと思います。しっかり自分たちの仕事に自信を持ってしっかりアピールしていかなければなと思います。
どんなメンバーが関わっているのかは時事通信社に問い合わせてみたのでもし回答をいただければ追って報告したいと思います。
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