それは、梅原真さんという、高知県在住のパッケージデザイナーを取り上げているコラムでした。梅原さんはデザインを通して、一次産業のプロデュースや地域の課題解決などで活躍していらっしゃるそうです。
さて、タイトルの「図工」を「図工・デ」に変えるという話ですが、我々はみんな、おそらく小学校の頃に、図画工作という授業がありましたよね。この、図画工作とは、絵を描くこと(図画)と、ものを作ること(工作)ですね。
梅原さんはそれだけじゃ、問題解決の思考は養われないでしょとおっしゃられています。そこにデザインを持ち込むことで、それが養われるのじゃないかと。
梅原さんはおっしゃられています。
図工は絵を描き、モノを作ることですが、デザインは絵を描き、モノを作ることだけではありません。
全体を見ることが重要なのであって、お城の絵を描き、空き箱でロボットを作ることがデザインではないんですよ。
つまり梅原さんは、デザインとは
全体設計をしたり、大きな意味を考えることだと定義づけられています。
だから、そういった問題解決の思考を養うために、また全体設計をしたり、大きな意味を考える「癖」を養うために、大学教育をどうしようとか、社員研修がどうだとかではなく、小学校の通信簿の「図工」を「図工・デ」に変えようと提案されているわけです。
そうすうことで、家庭で「デザイン」とは何かについて考える機会が生まれます。
「そりゃお前、『デ』はデザインの『デ』だろう。デザインというのは……ほら、スーパーに行けばミルクが置いてあるだろう。うちはいつも『おいしい牛乳』を買っているけど、他にもいろいろな種類のミルクがあるだろう。たくさんの種類がある中で、ある銘柄を選ばせる、それがデザインというのと違うか」
これってすごく大切なことだと思います。まず、世の中はデザインであふれていることに気付かされます。そして、なぜデザインで溢れているのかについて、思考がめぐります。お母ちゃんは「たくさんの種類がある中で、ある銘柄を選ばせる」ためやと説明してみる。
どうすればある銘柄を選んでもらえるかは、問題設定です。そしてデザインを通じて、つまり全体設計をしたり、大きな意味を考えたりすることで、問題を解決する、つまりある銘柄を選ばせるわけです。
このためには、なぜ人はある銘柄を選ぶのか、どういった情報に人は心を動かされるのかといったコミュニケーションの問題が存在します。
また、ある商品のデザインを決定するという問題を深く深く突き詰めるために、クリティカル・シンキングも求められるでしょう。グループで作成に当たればディスカッション能力もつくし、チームワーキング力もつく。さらに最終的になぜそのデザインにしたかを発表させることでプレゼンテーション能力もつく。またその過程で自然とクリエイティビティも養われるでしょう。
さらに、現在の子どもたちはデザインに含めるメッセージを決める際に、食品の安全や環境への配慮が消費者(翻ってデザインする自分たち)に魅力的なメッセージであることに気づくかもしれません。そして、「何のために売るのか」といった倫理観の問題すら議論の俎上に載ってくるかもしれません。
これまで、「お城の絵を描き、空き箱でロボットを作る」時間だと思われていた図工が、「デ」を加える事で現在求められている、真の意味での総合教育になるのです。
ちなみに、実在する地域の商品デザインを授業で行うことで、地域活性化や地域・商品への愛着醸成にも役立つでしょう。
多少のカリキュラムの変更は求められるかもしれませんが、さほどお金のかかることでもないでしょうし、ぜひ実施していただきたい。
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